・地下格闘技編/堕落

赤いロングブーツに、同色のボックスタイプのタイトなパンツ。地下格闘技場では珍しい色だが、ヒトの頃からこれがナギの勝負姿だ。堂々たる獅子の肉体は、若さに似合わずチャンピオンの威厳を漂わせている。一度リングに上がれば、通常時の様な人の良さは消え獣としての闘志や殺気があたりに漲って行く。
対する白狼のトウは、中年に差し掛かった固太りの肉体を晒し、ベテランとしての風格を醸し出していた。綺麗に割れてパンパンに筋肉の詰まった両胸が、その肉体の仕上がりを物語っている。くたびれていた往年の白いロングブーツやレスリングパンツは、キョウに敗れた際に変更され、今は新品同様の真っ黒なロングブーツとレスリングパンツに身を包んでいる。フェイスからヒールへ転向させられた事も有り、名実共にトウは堕落していた。正統派を貫いていた堅物は、今やエロレスでの勝率を徐々に上げて行きヒールの目下注目株とされている。その厳つい表情に、フェイスの時には見られなかった淫靡な光が見て取れるのは、ナギの錯覚ではないだろう。キョウの調教を経て、トウは立派なエロレスラーとして覚醒しつつあった。

一礼をし、薬を飲み込む。地下格闘技場のルールである。ムクムクと二匹のチンポがパンツの中で大きくなり、竿のシルエットが浮かんだ。ダウンか、射精したら負けという単純極まりない掟は、野獣達の闘いに相応しい。歩くだけで生地と亀頭が擦れ、常人ならば耐えられない快感が与えられる。しかしナギとトウは何でもないかの様に平然と向かい合い、闘いが始まる。
最初に仕掛けたのはトウだった。素早い身のこなしでナギの厚い胸に手刀を叩き込む。見事な先制攻撃にナギは息が詰まった。怯んだ隙を見逃さず、トウは足払いをかけナギの巨体をマットに沈め再び手刀を打った場所にエルボーを体重をかけて放つ。ナギは一瞬の判断で筋肉に力を込め、僅かに位置を鳩尾から逸らしダメージを軽減させた。
鮮やかに蹴りを胸に入れ、その反動でナギは身を立て直す。しなやかで強靭な肉体がふわりと浮かび、筋肉のテンションが高まると、凄まじい速さでトウの右腕が跳ね上がる。ナギの強烈な一撃が、目にも留まらぬスピードで叩き込まれたのだ。
「――!!」
トウが驚いたのも束の間、既にナギは右腕を掌握し、合気道の要領で肩を軸にトウの巨体をマットに沈める。頭を強かに打ち、火花が散った。右腕はがっちり手足を組まれ、ギリギリと締め上げられていく。
「グアアアアアッ!!」
腕が肩からもげてしまう様な痛みが、トウの全身を貫いた。ナギであれば、実際それも可能かもしれない。
「降参、しろっ!!」
ナギが最後通告を出し、揺さぶりを掛ける。10カウントを取られるよりも前に、肉体に影響が出る事を見越した発言だった。トウがマットを叩けば、それで終わりである。
「お、俺は……負げねぇっ!!」
トウはカッと目を見開き、伸ばされた腕と脇の間に当たっているナギのパンツを、渾身の力で挟み込んだ。ギュッとパンツと擦れた亀頭は、薬で敏感になっておりナギの脳にダイレクトで刺激を伝える。
「ぐ……」
一瞬の力の緩みが、トウの拘束を解く結果となった。スルッと抜けていく腕は、途中でナギの股間を鷲掴みにし形勢が逆転する。ゴツいトウの指が、キョウ仕込みのイヤらしい手付きでナギの玉袋をパンツ越しに撫でる。
「貴方はそんな人じゃ無かった」
込み上げる快感に顔をひくつかせながら、ナギは残念そうに言った。股間を揉む力がより一層強くなる。
「俺だって嫌さ!!……でも、もう俺は俺じゃない、キョウ様の所有物だから……どんな手を使っても勝つ。それが俺達の掟だからな……ほら、俺のチンポももうギンギンになってやがる…キョウ様のお蔭で、俺も漸く一人前のエロレスラーになれたんだぜ…」
プロレスラーからエロレスラーへ。欲情をリングに持ち込んだトウは、キョウの思想に毒されていた。嫌だけれど、カラダが、ココロがそれを望んでいる――では、否定する意味が何処にある?
あらゆる欲望のままに、トウは淫獣として堕落、或いは覚醒していく。
赤のレスリングパンツがずり降ろされ、ナギの見事なケモチンが露わになる。トウは厚い胸板で出来た筋肉の谷間に肉棒を挟み、手足でナギの身動きを封じながらゆっくりと上身を前後に動かし始めた。
――ズリュッ、ズリュッ、ズリュッ、ズリュッ……
「ウ、ウアアアアアアッ!!」
「苦しんでる顔が、やっぱり一番、だぜぇっ!!」
悲鳴を上げるナギを、半笑いでトウは眺める。最早プロレスラーとしての矜持を取り戻せない彼は、キョウに従属し快感に身を委ねる事に抵抗を感じなくなりつつあった。その自らの淫行に興奮し、レスリングパンツの先から納まり切らなくなったチンポの先が飛び出している。
「ハッハッハッハッ……」
犬の様に荒い息が、二匹から漏れる。ナギのチンポからは先走りが流れ出し、トウの豊かな胸の毛を湿らせていく。ナギの腹にはトウが垂らす涎が、腹筋の溝に溜まっている。既にリング上は交尾の様相を呈していた。
(こ……このままじゃ……)
迫り来る絶頂の波に抗いつつ、ナギは勝機を探す。しかし、トウが長くざらつく舌を伸ばし、ナギの尿道を舐めたので全身から力が抜けていってしまう。
「塩辛いなぁ……もうすぐ射精しちまうんじゃないか?」
勝利を確信しつつあるトウは、余裕の表情でナギを攻め立てていく。
(ぐあああああっ!やめろおおっ!!)
情けない事に、艶っぽい鳴き声がナギの喉の奥から漏れた。射精するのも後数十秒という所で、ナギは博打に出る。
覆い被さったトウが胸でチンポを擦る間で、一番ナギの頭とトウが近付いた時に、ナギは腹筋を全力で動かし、トウのせり上がってきた額と額を激突させた。
――ゴツッ!!
「グオッ?!」
強い衝撃にトウは眩暈を覚える。圧倒的な優位さはナギの機転により、一瞬で逆転する。トウをはねのけ、ナギがマウントポジションを獲得する。ダウンではない様に、また、股間を守る為に、本能的にうつ伏せになったのが、トウの運のつきだった。
両脚を抱え込むと、そのままナギは怪力でグイッとトウをエビ固めにしてしまう。腰からほぼ直角に折れ曲がる程の、容赦の無い威力である。
「が……はっ……」
肺が圧迫されて呼吸もままならず、トウは地獄の苦しみを味わう。情けない格好で、海老ぞりになった所から堂々と勃起したチンポが丸見えになってしまっていた。酸欠と痛みで、トウの顔は酷い惨状になっている。
急に全身の力が抜け、落ちてしまった事がわかる。ぐったりと四肢を投げ出した白狼は、またしても敗北者となってしまった。
(……勝った)
ナギは久し振りの辛勝となった。これからの闘いはより一層難易度の高いものとなる事を、予感させた。

ルールなので、ナギはトウのレスリングパンツを下ろし、薬で萎えないイチモツをトウのアナルに挿入していく。汗臭いトウの匂いを嗅ぎ、羞恥心を高めてるのも忘れない。気絶から復帰したトウは、ぐったりと絶望的な面持ちでそれを見守っていた。
――ズブゥッ!!
「アヒッ!!」
全身を強ばらせ、トウはチンポを受け入れていく。キョウによって拡張されたアナルは、ナギのイチモツも丁度くわえる事の出来るサイズであった。
バックで淡々と犯すナギに、残酷な事をしているという後ろめたい感情が走る。しかし、これをするのが決められたルールであるし、しなければ薬は抜けない。それに、獣である肉体は交尾を喜んでいた。
「あ、あ、当たるッ!ウオッ!ウオッ!ンアッ!」
トウは屈辱と快感に苛まれながら、ひたすら犯されて居る。涎、鼻水、涙、汗、流せるものは何でも流しているという状況だ。
正面に黒い影が立ちはだかり、トウが息を飲む。黒獅子で彼の飼い主となったキョウが憤怒の形相で腕組みをし、トウを睨みつけていた。
「キョウ様、申し訳ありません!!キョウ様……キョウ様…!!」
負けた事についてか、それとも、飼い主以外に犯され感じている不貞についてか、トウは泣きながら謝罪を繰り返す。
「ンアッ!ンアッ!ンアアアアアアッ!!」
「グオオゥゥゥッ!」
二匹の野獣が同時に果て、尋常でない量の精子が溢れ出る。ナギに中出しされる前に、トウがトコロテンしてしまう。リングに水溜まりの様に精液が溜まり、アナルからはいつまでもナギの精子が溢れ逞しい腿を汚し、ロングブーツの中へへと伝っていった。
精液の中に倒れ臥し、トウは精根尽き果てる。
「申し訳ありません……申し訳ありません……キョウ様…」
いつまでもそう呟く敗者を後目に、ナギはリングを後にした。

「よう」
気さくに手を上げるのは黒獅子のキョウだ。ナギは露骨に怪訝な顔をしてそちらを見る。
「今日の試合の事で、トウを罰したりするなよ」
ナギは強い口調で言った。あの怯え方や、調教の結果を見るに、トウがこれ以上キョウに何かをされるのは見逃せなかった。
「トウはあんな奴じゃ無かった……あんな奴じゃ……」
「負けたんだから、仕方ねえだろうが」
キョウは憮然として言う。ナギもそれについては黙った。弱肉強食、弱い者は強い者に従う摂理がある。地下格闘技場はそういう場所だから、これ以上は何も言えない。ある意味、キョウの方が正しいとさえ言えるのだ。
「強くなってただろ?」
「え?」
「トウは前よりも強くなってただろ?」
ナギは逡巡し、戸惑いながらも頷いた。確かに、以前よりはずっと力を付けていた。プロレスとしても、エロレスとしても。
「俺はな、自分の持ち物はちゃんと愛して、面倒を見るタイプなんだよ。ま、ちょっと過激派ではあるけど」
「嘘だ」
「ホントだって。トウはナギにまだまだかなわないと思っていたが、なかなかどうして、結構善戦してたし。怒ったりしねえよ」
「さっきはあんな怖い顔で睨んでた癖に」
「俺様が主人なのに、あのザマはねえだろ」
ナギに犯されて感じていたのを、許せない訳ではない。ナギに犯されて感じていたのが嫉ましかったのだ。しかしキョウの性格上そんな事は口が裂けても言えないので、こういう表現になるわけである。そして、それが災いして意中のナギには一向に気持ちが伝わらない。
「ま、次は俺様だからいっか……」
「何か言った?」
「……別に」
キョウはにやけそうになる顔を引き締め、次の対戦をシミュレーションするのであった。

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