『格闘家連続失踪事件対策本部』
と墨書きされた貼り紙のある会議室が、雨宮の最近詰めている場所だ。と言っても、実質雨宮とその先輩である福留の二人しかいない。格闘家を拉致するくらいなら、恐らく相当の戦闘力を有した相手、しかも複数だろうという推測に基づくコンビだった。
雨宮と福留は警察官の中でも武道のスキルが優秀な男だ。雨宮は身長が190センチ近い巨漢で、合気道や柔道を修めた若きホープである。28歳にして刑事課に移る前には、SATに所属しており素晴らしい成績を叩き出していた。短く刈り込んだ髪に、猛禽を思わせる鋭い眼光、スラッとした長身に見せかけて鋼の様な逆三角形の胴とちょっとやそっとじゃビクともしない太く鍛え抜かれた下半身がスーツ越しにも窺える。
一方、福留は37と肉体的な加齢が隠せない歳ながら、165センチという決して長身とは言えない身体に、ギュッと濃縮した様な筋肉の鎧を身に纏っている。くたびれたスーツは何処もパンパンに張り詰め、触れればそれが贅肉ではなく硬い筋肉であると分かるだろう。実際、一般のボディービル大会で入賞した事は数え切れない。白髪の交じり始めた坊主頭を掻き、獣の様に呻くと大きく背中を伸ばした。ワイシャツにくっきりと胸板の割れ目が浮き出、だらしなくスーツがヨレる。
署内では『野獣コンビ』と密かに呼ばれているこの二人。なかなかどうして検挙率が良く、割と上手い組み合わせだった。熱くて痛々しいくらいに青い雨宮と、鉄の意志で真相を突き止める福留。二人は時に親子の様に、時に兄弟の様に固い絆で結ばれていた。
「フクさん」
「あん?」
「これ……本気でやるんですか?」
雨宮の手には黒の布地に赤い隈取りがされた鷹をモチーフにしたマスクが握られていた。
「調査だからな」
広い都内の地図に一カ所丸く赤で塗られた部分を指差す。二人が調べ上げた、謎の組織の根城『地下格闘技場』。それはとても信じられる内容では無かったのだが、失踪した者達の大半はそこに訪れた形跡を最後に足取りが掴めなくなっている。
「人が獣になるなんて、そんな馬鹿な話は無い。きっと薬中の巣窟なんだろ」
「俺もそう思います」
「一応プロレスラーって体の方が入り易いだろうが」
そう言われると雨宮も黙らざるを得ない。
「大丈夫だって、ミヤなら大抵の奴には負けねえよ」
笑いながら肩を叩かれ、雨宮は苦笑した。それが二人の、最後の捜査になる事など夢にも思わずに……
言われた通りに階段を降りると、暗い部屋に二つのドアとその真ん中にブースがあった。
「観戦ですか?参加ですか?」
「参加です」
互いの顔が見えない様に、ブースの窓はスモークガラスになっている。雨宮はドキドキしながら返事を待った。
「かしこまりました。では右手のドアにお進み下さい。来客用ロッカーと書かれた部屋が、貴方の控え室になります。失礼ですが、リングネームをお伺いしても宜しいですか?」
「バッドホーク」
「かしこまりました。では係りの者が伺うまでにご準備下さい。御武運を」
恥ずかしいリングネームに冷や汗をかきながら、雨宮はドアへ歩いた。
「うわ……何だこれ」
来客用ロッカーには、衣服やウェアが散乱しており、荒廃を極めていた。帰って来た者はいないという噂を、否が応でも思い起こさせる。雨宮はブルブルと頭を振ってスーツを脱ぎ始めた。すぐに屈強な裸体が露わになり、厚手のレスリングパンツを広げて行く。半分剥けたチンポを押し込め、黒い三角形のパンツをきっちりと穿きこなした。ビジネスソックスから膝丈まであるサポーターと一体化したスポーツストッキングを穿き、ロングブーツを苦戦しながら身に着けた。最後に凶悪そうなデザインの鷹のマスクを被ると、雨宮はバッドホークに変身した。プロレスラーと比べれば若干細身ではあるが、若手達であれば遜色ない。恥ずかしい格好になってしまったと雨宮は一人マスクの下で悶々としていた。スーツを無造作に丸めて放ると、すっかり悪役が様になっている自分の姿に溜め息が出た。
(フクさん……見てて下さい!!)
決意を新たにした瞬間、こんこんとロッカーのドアがノックされた。
観客も相当数入り、リングの上は熱気に包まれていた。しかし、今の雨宮にそんな事を考える余裕はない。
目の前に立っているトウ、つまり白狼の獣人を凝視していた。着ぐるみなどではない、圧倒的な存在感。ロッカーに来た者も、廊下ですれ違った者も全員が獣人であった。
『負けたら獣人となり、地下格闘技場の演者になる』
その馬鹿げた噂が真実味を帯び、雨宮を萎縮させる。薬を飲まされると、まともな思考さえ覚束なくなってきた。
(マズい……これはヤバい…)
警察官になってから職務一辺倒だった雨宮にとって、この快感は想定外だった。レスリングパンツがグッと持ち上がり、呼吸が荒くなる。既に汗だくのカラダがライトに照らされ、ブーツの足先がもぞもぞと刺激を求めて蠢いた。
「お前、美味そうなガタイしてるな」
目の前の白狼が言語を操り、舌なめずりをした。剣呑な目つきにビクつく凶悪なサイズのイチモツ。全身からは獣の匂いがムッと立ち込め、雨宮は剣道場に籠もった香りを思い出した。
(元はコイツも失踪者……?)
疑念と自らの身に迫る危機に、雨宮は悪寒を抱いていた。
カンッ、とゴングが鳴り雨宮はファイティングポーズを取る。身長はトウに負けておらず、鷹のマスクも箔をつけていた。無駄の無い挙動で、トウとの間合いを詰め、一気に攻勢を掛ける。
「でりゃあああっ!!」
水平に振った腕は、トウの厚い胸にクリーンヒットした。しかし、トウはビクともせずににやりと笑うと、その腕をガッチリ掴み離さなかった。
「な……?!」
「へへへ…ヒトだったら効いたのになぁ!」
獣人の力を、雨宮は甘く見ていたのだ。ギリギリと締め付けられる腕は、逞しかったがこの白狼にとってみれば簡単に折ってしまえる程度の物だった。
「あ……がああっ!」
ミシミシと骨が鳴るのを楽しみ、トウはある程度雨宮を痛めつけてから解放した。
(勝……てない…)
それは武道を習得した者の直観だった。圧倒的な力の差を一瞬で見出した絶望。雨宮の足はガタガタと震え始めた。
「怖いのか?……大丈夫、お前は土台が良いから立派な獣人レスラーになれるぜ、安心しろ」
トウが大笑いをし、雨宮の理性は恐怖で吹き飛んだ。
「ウオオオアアアアアアッ!!」
がむしゃらに放った手刀は虚しく空を切り、トウの巨大な手で掴まれた。軽くトウが手を捻ると、反動で嫌な音がし、雨宮の両肩の骨が外れる。
「ガッ!!いてぇぇっ!」
「もう一丁!」
「アアアアアッ!!」
両脚の関節も外され、雨宮はだらしない大の字でリングに転がされた。ダラリと明後日の方向を向いた手足が、痛さを物語っている。マスクの奥では痛みに白眼を剥き、口の端に泡を噴いていた。唯一、元気にチンポだけがそそり立っている。先走りで滑り光るレスリングパンツは、雨宮の敗北を誇らしげに表していた。
「ククク、お前の負けだ!!」
「あ、い、嫌だぁっ!!」
パニックに陥る雨宮を無視し、トウはマスクに手を掛け一気に引き裂いた。男らしい雨宮の素顔が露わになる。汗で髪に珠の汗をかき、痛みで口が小刻みに震えていた。
「思ったより良い雄じゃねぇか!」
動けない雨宮のレスリングパンツを裂き、凛々しく立つイチモツに触れた。撫でる様に、トウは毛皮を使いながら高速で雨宮を手コキしていく。
「あ……あ、あ…出るッ!出ちまうッ!!」
屈辱に顔を歪めながら、雨宮はトウの手のひらに大量の精液をぶち撒けた。
「獣化前から馬並みだな」
トウは嫌がる雨宮の顔面に、精子をベッタリと塗りたくった。イカ臭い匂いと、自身の体液が塗られるという信じがたい状況に、雨宮は吐き気を催した。しかし、薬が効いているのでカラダは熱く、勃起は萎える事無く続いている。
「負けたらどうなるか、分かってるよな?」
邪悪な笑みを浮かべるトウの手には、大量の薬が握られていた。
――その数十分前。
福留は客席を立ち、急いで携帯電話を取り出した。兎に角この場所では異形の者達が異常な事をしている、それだけは確かで、問題は後輩の雨宮に全く勝ち目が無さそうな事だった。
呼び出し音が鳴る中、ワアッと歓声が上がる。福留は気が気では無く、リングを窺った。丁度、雨宮の両腕の関節が外された瞬間だった。
「雨宮!!」
つい叫んでしまったと同時に、掴んでいた携帯電話を誰かに盗られてしまう。振り返ると、フードを深く被った巨体の男が、福留の携帯を握り締めていた。パキッと軽い音がして、携帯は一瞬でスクラップになる。
「携帯のご利用は禁止です……ってそれくらい自分で言えよなあの馬鹿オオカミ!!」
鋭い一撃が福留の鳩尾に入り、闇の中へ転落した。
「グムッ…ゴハッ!!ゲホッ!」
大量の錠剤を無理矢理詰め込まれた雨宮は、ものの数十秒で再び発情を迎えた。
「おあぁぁ……俺、おかしくなるぅっ!!」
視線はトウのチンポに釘付けになり、顔に塗られた自身の精子に興奮していた。
「理性を捨てて快楽に浸れ。薬漬けで楽しませてやるよ」
ぞろぞろとリングに他の獣人達が上がってくる。猪、虎、ゴリラ……チーカマの様にツルリと剥けたチンポを揺らし、雨宮をぐるりと取り囲んだ。強い獣と汗の匂いが、雨宮を刺激する。
ずぶっ、とトウのイチモツが一気に最奥部まで挿入される。雨宮は絶叫し、胸を上下させてトびになっていた。
「ウオアアアアッ!!気持ちイイイイイイッ!!」
警察官にあるまじき言葉を発し、雨宮の精神は薬と獣に汚染されていく。獣人達の精子を浴びる度に、自分が獣人に一歩ずつ近付いている事など、彼は知る由も無かった。
椅子に縛り付けられた福留は、ゆっくりと顔を上げた。スーツに巻き付けられたロープはキツく、猿轡をされている。目の前には大きなモニターが有り、三匹の獣人達が雨宮を輪姦していた。猿轡の奥から、悲痛な呻きが流れる。福留が驚いたのは、何より雨宮が嬉しそうに獣人達の凶悪なチンポをくわえている姿だった。
「残念だが、君の部下はもう我々の仲間になる以外に道はない」
モニターの影から、茶色の毛並みを持つ狼が現れる。地下格闘技場オーナーのシバだった。
「そして、イレギュラーだが君もだ」
手元に注射器のアンプルを持ち、シバは歩み寄る。激しく首を振る福留を乱暴に押さえ、素早く右首筋に針を刺した。体内に薬物が循環していき、その度に小刻みに脚が震える。
「君にチャンスをあげよう。この薬は、獣人に犯されなければ効力を発揮しない。三時間経てば薬そのものの効果は無くなる。君が彼を見捨てて、かつ、此処の事を誰にも言わないと約束するなら見逃そう」
付き人の黒猫人が、福留の拘束を外していく。福留は震える足で部屋を飛び出し、残されたシバは不敵に笑った。
雨宮の肉体は最終段階に移行していた。獣人達の精子をたっぷり孕んだ腹は、筋肉量が格段に増加し、特に胸板は迫り出しているかの様に膨らみ鳩胸となっていた。肩甲骨は尖り、背中に二つの大きな突起が出来、体臭も獣人達とほとんど変わらない。精液まみれの全身を愛でられ、雨宮は最後の一撃を受けようとしていた。
ガタン、とドアが開き、男がゆっくりリングに向かう。薬で惚けた頭でも、それが誰だか雨宮には分かった。
「俺だけ、逃げられる訳ないだろ……」
呟く様にそう言うと、福留はリングに駆け寄り、強引に獣人達の間に割って入った。
「フクさん、逃げて下さい!!フクさん!」
「うるせぇ!!」
獣人達はこの茶番をにやにやと見守っていたが、イノが福留を強かに打ち付けると、彼は精子まみれのマットに転がった。
「フクさん!ガッ………アアアアアアッ!!」
最後の一発が雨宮に種付けされ、彼は胸を押さえて苦しみ始めた。更に屈強な肉体へと、強制的に変化させられる苦しみが雨宮を貫いた。獣人達からは粗野な歓声が上がる。
焦げ茶色の体毛と、それに混じる黒の体毛が、背中から生えて行き全身に広がっていく。肘や膝から先は黄色い鱗状の皮膚に変化し、指は三本、長い鈎爪が出来、踵も同じ指に変わる。半分被っていた皮がズルリと剥け、生々しい先端の尖ったチンポが毛皮の合間からすくっと伸び 物欲しそうに揺れた。苦痛に歪む厳つい顔は体毛に埋没し、鋭い目つきだけが猛禽の物として金色に変わる。短髪の髪型はそのままに、黒く鋭い嘴が現れ、雨宮が猛禽の王、鷹へと獣化した事が窺えた。
「ガッ!!ウガアアアアアアッ」
肩甲骨は更に変化し、背中から巨大な翼が生える。羽毛が飛び散り、鮮やかな模様が露わになった。丁度その瞬間に雨宮だった鳥人は性的な快感の絶頂を迎え、濃厚な精子を何度も射出した。ヒトの頃の記憶は消え、野獣としての本能が刷り込まれる。呆然とする福留の前には、新たな獣人が一匹佇んでいるのに過ぎなかった。
「ミヤと申します。トウ様」
雨宮と同じ声で、同じ実直な表情で、鳥人はそう言った。ミヤ、とあだ名を着けたのは福留だったので、その事が悲しい記憶として蘇る。
「嘘だろ、なあ?」
ふらふらと近寄る福留を、獣人達が無理矢理スーツを破き、全裸に剥いてしまう。それをミヤはじっと無表情で見つめていた。
「雨宮……」
立派な体躯を露わにした福留は、獣人達にがんじがらめにされながらも、その鳥人から目が離せない。
「ミヤ、その男を犯してやれ」
「了解しました」
トウの命令に従順に応えると、ミヤは躊躇い無く福留の未開発のアナルに尖ったチンポを突っ込んだ。
「あがあああああっ?!」
痛みに全身を硬直させ、福留は喘いだ。獣になってしまったミヤからは、雨宮と同じ汗の匂いもした。ミヤは一定のペースで腰を力強く振り、毛深い福留の肉体を愛撫する。福留はただ、後悔と屈辱に浸り可愛かった後輩に犯されていた。
絶頂も間近の時に、ミヤは突然こう言った。
「何故だか分からないが、俺は貴方の事が……好き?なのか?……」
それを聞いた福留は、泣きながら笑った。腹の中に、熱い物が注がれていくのを感じながら。
「が……………っ!クウッ!!」
骨格が変化し、福留のボディービルで鍛え上げた肉体は獣人の物へと変化していく。漆黒の毛が全身を覆い隠し、手や足に肉球が現れる。爪は鋭く、猫背気味になり、鼻が潰れて黒く平べったくなる。剥き出しの牙に、野獣へと変化した証に大量の涎がリングに滴った。
「あはぁぁああ……んああっ!」
毛深い股間の間から、曲線を描いた太く短いチンポが飛び出て、獣化の快感にドロドロと黄色がかった精子を大量に放出した。厚く鉄板の様な胸には、真っ白の半月状の模様が一本。福留は、熊の獣人へと変化した。
「フク」
「はい、トウ様」
従順に従う同期の獣人達を見て、トウは和やかに微笑んだ。
『野獣コンビ』が失踪してから一週間後、一本のビデオテープと二人の警察手帳が署に届いた。これは極秘とされ、一部の者以外内容を知らない。
ビデオテープには、二人が獣化する一部始終が写されており、その性的かつ反社会的内容から封印されている。ビデオテープの最後に写るのは、こんなシーンらしい。
鷹人のミヤと、熊人のフクはプロレスの技を練習し合っている。そのままどちらからともなく舌が絡み合い、二匹は盛り合いを始めるのだ。
「ああ、ミヤ!!もっと俺のぉっ!中を突いてくれぇっ」
「クッ!了解した!!んあっ!締まるッ!!」
「ガアアッ!!擦れるゥッ!」
「同時に出すぞ!3……2……1……!!」
「ウガアアアアアッ!アッ!!アッアアアアッ!!」
「ウオオオオオッ!!ンアアアッ!!ウオッ!ウオオッ!!」
合わせて1リットル近く有るのではないかと疑いたくなる程、大量の精子を吐き出し、それにまみれる二匹。愛おしげにキスを交わす。ベタベタに汚れたままだったがトウに呼ばれ、二匹は立ち上がって画面からフェードアウトした。